大勢のなかのあなたへ ひきたよしあき

学生は夏休みだ。

ラジオの「夏休み子供電話相談室」のような番組があったのを覚えている。知ったのは社会人になって2,3年目の時。営業車の中で聞いていたのだが、子供たちの素朴な直球の数々は、時に大人もぞっとするほどのキレがあり回答者を仰け反らせることもあった。この本を読んで、暑い営業車の中で仕事に対して悶々とした気持ちになっていた当時を思い出した。

 

当時の私(今もかもしれない)のように仕事と生活に悶々としてくすぶりくさりかけている人におすすめだ。

 

朝日小学生新聞のコラムをまとめたものが本書だが、読者から送られてきた「手紙」に筆者も「手紙」を書くという文通スタイルで展開していく。

 

手紙の内容は新しい学年で学び始めたことにたいするアンサー、友達ができないといった学生らしい悩みから、議論が強くなりたい、世界で活躍したいなど大人のような悩み相談もある。

 

例えば、「自分勝手なあなたへ」という話。どうすれば自分勝手が直るかという問いに、一日喋ったことを録音するとして主語が「私」になっている人は「あなた」へ変えてみるだけで人の話をよく聞けるようになる。そして相手の話をバットで打ち返さないようにとアドバイス

バットを置いて、ミットをはめて話を受け止めようとは言い得て妙だ。自分勝手は一人では直せない。相手への態度を変えて初めて直るもの。なんだか自分に対して言われているみたいだ。

 

著者のひきたよしあきさんは博報堂に入社後、CMプランナー、クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。

少し調べてみると、まだこのコラムが続いているようで続編も出ているらしい。

 

肩の凝る難解な本を読み疲れたらシンプルだけど核心をつく本書を読むと頭の中が整理できるかもしれない。